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インフルエンザは、インフルエンザウイルスがヒトに感染することによっておこる急性の呼吸器感染症です。毎年、日本を含め、世界中で流行があります。インフルエンザは、ウイルスが身体に入ってから2〜4日間の潜伏期間のあとで、突然に発熱(38℃以上の高熱)します。たいていは、筋肉痛、関節痛、頭痛、全身倦怠感などを伴います。次いで鼻水・咳などの風邪に似た症状が出てきます。たいていは1週間程度で治りますが、「風邪」と比べて全身症状が強いのが特徴です。「インフルエンザは風邪の一種でたいしたことはない」という考えをもっていらっしゃる方々が多いと思いますが、いわゆる風邪と考えない方が良いでしょう。
特に持病のある方は、インフルエンザにかかると合併症を併発する場合があります。たとえば高齢者は細菌の感染による肺炎、気管支炎、慢性気管支炎が起こるおそれがあります。また、乳幼児は中耳炎や熱性けいれんが起こることがあります。その他、インフルエンザウイルスによる肺炎や気管支炎、心筋炎が起こることがあります。インフルエンザ発症時にアスピリンを服用すると、ライ症候群が起こることがあります。合併症の重症度によっては入院を要したり、死亡したりすることがあります。特に重篤な合併症として、小児においてインフルエンザに関連する急性脳症(インフルエンザ脳症)があります。
インフルエンザウイルスは、ウイルス粒子内のタンパク質の抗原性(構造)の違いから、A型・B型・C型の3タイプに分けられます。このうち毎年流行的な広がりを見せるのはA型とB型です。A型のウイルス粒子表面には、赤血球凝集素タンパク質(HA)とノイラミニダーゼタンパク質(NA)という2種類のタンパク質があります。HAには16の型が、NAには9つの型がある事が知られています。A型ウイルスはこのHAとNAの組み合わせでさらに細かく分類されます(亜型といわれます)。従ってA型ウイルスは最大で16 × 9 = 144の亜型が存在することになります。たとえば、2010年から流行し始めた新型インフルエンザウイルスはHAが1型でNAが1型です。省略表記ではH1N1亜型と表されます。ヒトではHAは1〜3型, NAは、1または2型が流行しています。
1968年に香港型インフルエンザ(H3N2) が現われ、1977年にはソ連型インフルエンザ (H1N1)が現れました。小変異を続けながら、現在はA型H3N2亜型とH1N1亜型、およびB型の3種のインフルエンザウイルスが流行しています。これら3種を季節性インフルエンザといいます。一方、2009年4月から流行し始めた豚インフルエンザ(H1N1亜型)をパンデミックインフルエンザ、または新型インフルエンザといいます。現在は、この季節性インフルエンザと新型インフルエンザの両方が流行していますが、H1N1亜型については、新型の方が優位に広がっています。
インフルエンザは人から人に感染します。主に飛沫感染が原因です。くしゃみ・咳などで口から出る唾液の飛沫が、他の人の鼻や口に入り込むのです。他には接触感染もあるといわれています。くしゃみをした時に唾液・鼻水が飛んで机やドアノブなどに付着し、その部分に他人が触れて、口や鼻から入り込むという経路です。さらには、咳やくしゃみをしたときに口を手でふさいだ際に手に唾液・鼻水がついて、その手と握手した他人の手にもウイルスがうつる経路もあるといわれています。
ヒト以外にもブタやトリなど様々な動物に感染します。ペットの猫や犬にも感染します。そこで、A型インフルエンザはヒトにも動物にもかかる、人獣共通感染症ととらえられるようになりました。特に重要な感染対象(宿主)は鳥です。その中でも渡り鳥は、インフルエンザウイルスに感染しても症状が現れにくく、比較的元気なままで飛ぶことが出来ますので、感染した鳥が飛んでウイルスを広い地域に広げます。すなわち、渡り鳥はインフルエンザウイルスの運び役なのです。
ウイルスの表面にあるHAとNAは、同一の亜型でも 抗原性(構造)が毎年のように少しずつ変化しています。そのためA型インフルエンザはたくみにヒトの免疫機構から逃れ、流行し続けるのです。これを連続抗原変異、または小変異といい、いわば自動車のマイナーモデルチェンジのようなものです。連続抗原変異によりウイルスの抗原性の変化が大きくなれば、A型インフルエンザ感染を以前に受けて免疫がある人でも、再び同じ亜型のA型インフルエンザにかかることがあるのはこのためです。
異なる亜型のウイルスが、ヒト以外の動物からヒト集団に入り込んで広がることがあります。これを抗原不連続変異または大変異といいます。数年から数十年単位で起こります。いわば自動車のフルモデルチェンジのようなもので、新型インフルエンザウイルスの登場です。たいていは大変異ウイルスに免疫のある人たちが少ないので、大流行(パンデミック)になります。1918-1919年に大流行したスペイン風邪は、この大変異の例です。当時、世界各地で大流行し、その罹患者数は6億人、死亡者は約4,000 万人にのぼったと推定されています。日本での罹患者は2,300 万人、死者は約40万人に及んだといわれています。
インフルエンザは、毎年11月下旬から12月上旬に発生が始まり、翌年の1-3月頃にその数が増加、4-5月にかけて減少していくというパターンが一般的です。2010-2011年シーズンではH1N1(80%)、H3N2 (16%)、 B型(4%)の順で流行しています。年代別に見ますと、5〜9歳(19%)、20代(16%)、30代(14%)、10〜14歳(12%)、0〜4歳約(12%)の順で罹患しています。20歳未満の若者が、感染者の約半数を占めています。
ヒトで流行しているH1N1とH3N2以外の亜型ウイルスが動物で流行しています。なかでも鳥で流行しているH5N1亜型のインフルエンザウイルスが重要と考えられています。
とりわけ病原性が高いH5N1鳥インフルエンザ(高病原性H5N1)がヒトに感染すると重症になります。最初の例は、1997年、香港で発生した時に、18人ものヒトにも感染した(うち6人死亡)例です。それ以来、現在に到るまでに全世界で534人が高病原性H5N1に感染したと報告されています(WHOの統計による)。このうち316人が亡くなっていますので、死亡率は約60%と極めて高い感染症といえます。
現在H5N1亜型の鳥インフルエンザウイルスは、ほぼすべての世界の地域で持続的に野鳥と家禽の間で流行を起こしています。日本でも、ニワトリ飼育場での流行が報道されていますのでご存じの方も多いでしょう。それらがときどきヒトに感染しているという状況なのです。したがってH5N1新型インフルエンザウイルスが、いつ出現してもおかしくない状況です。H5N1亜型に限らず、新型インフルエンザの発生に警戒が必要です。
ベッドサイドもしくは外来などでインフルエンザ抗原を検出できるキットが市販されるようになり、健康保険も適用されるようになっています。A型のみ判定できるもの、A型とB型が同時に判定できるものなどがあります。どちらも鼻の奥に綿棒を挿入して粘液をとります。また、コマーシャルラボなどでも、PCRによるウイルスの検出や血清中のインフルエンザウイルス抗体の測定が可能であり、ウイルス学的診断が容易にできるようになってきました。すべてのインフルエンザ疾患患者に対して、ウイルス学的検査を行うことは現実的ではありませんが、診断の裏付けとして重要な意味を持ちます。
インフルエンザウイルスが細胞から細胞へ感染・伝播していくためには、ウイルス表面に存在するノイラミニダーゼ(NA)が不可欠です。したがって、このNAの働きを抑えると、増殖したインフルエンザウイルスが細胞外へ出て行くことを防ぐことができます。
現在、我が国で使われているNA阻害薬は、@リン酸オセルタミビル(商品名「タミフル」)、Aザナミビル(商品名「リレンザ」)、Bペラミビル水和物(商品名「ラピアクタ」)、Cラニナミビル (商品名「イナビル」)の4種類です。いずれも発熱後早期(約48時間以内)に投与を開始するべきです。タミフルは経口薬で、リレンザとイナビルは鼻から吸入する薬です。ラピアクタは点滴で使用する薬です。特筆するべきは、イナビルは1回の吸入で5日間薬の効果が持続する点です。単回の投与で良いというのは便利です。
また、年少者においてはタミフル服用後の異常行動が指摘されています。現在のところ、専門家の調査では明確な因果関係は認められていません。ただし、因果関係は不明であるものの、未成年の患者においては原則としてタミフルの使用を控えるよう勧められています。投与する場合には、投与開始から少なくとも2日間、小児・未成年者が一人にならないよう配慮するように、保護者に対して勧められています。
- 1.予防接種
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インフルエンザワクチンは、エーテルでウイルスを処理して発熱物質などとなる脂質成分を除き、免疫に必要なウイルス粒子表面の赤血球凝集素(HA)を密度勾配遠沈法により回収し、主成分としたHAワクチンといわれる不活化ワクチンです。インフルエンザワクチンには、はしかワクチンのように発病を確実に阻止するほどの効果は期待できませんが、高熱などの症状を軽くし、肺炎などの合併症による入院や死亡を減らすことができるとされています。
特に65歳以上の高齢者や基礎疾患(気管支喘息等の呼吸器疾患、慢性心不全、先天性心疾患等の循環器疾患、糖尿病、腎不全、免疫不全症など)を有する方は、インフルエンザが重症化しやすいのでワクチン接種による予防が勧められます。また、重症化しやすい人が周辺にいる人や、その他にインフルエンザによって具合が悪くなることを防ごうと思う人に対しても、ワクチンは勧められます。2010-11シーズンは、新型インフルエンザと季節性インフルエンザ(A香港型・B型)の株が混合された国内産ワクチン(3価ワクチン)による予防接種が行われました。13歳未満の方は2回、13歳以上の方は1回の接種が推奨されています。
インフルエンザワクチンによる副反応については、軽度の副反応、すなわち局所反応を起こす可能性が10%程度あります。発熱など全身の副反応は1%以下です。死亡あるいは生涯にわたりハンデイキャップとなる重大な副反応の発生は、予防接種被害認定などの調査に基づいた調査では100万接種あたり1件に満たないといわれています。現在もさらにより良いワクチンへの改良開発がおこなわれており、投与回数・投与法(経鼻投与など)、アジュバント(免疫補助剤)の工夫など、新ワクチンの研究が進められています。
- 2.手洗い・うがい(接触感染対策)
手洗いは、個人衛生の基本です。外から帰ったときなど、こまめに手を洗いましょう。また、咳やくしゃみを手でおおったときにも洗いましょう。手のひら側、手の甲側、指の間をしっかり流水で洗います。親指を洗浄し忘れることが多いのでしっかり洗いましょう。流水で手を洗えないときは、手指にすり込むタイプのアルコール製剤も有効です。しかし、手に目で見えるような汚れがある場合は消毒効果が低下するため、その場合は流水で手洗いを行いましょう。
- 3.咳エチケット(飛沫感染対策)
咳やくしゃみをする時はティッシュやマスクを口と鼻にあて、他の人に直接飛まつがかからないようにしましょう。また、手のひらで押さえずに、二の腕あたりの服で押さえることも有効です。
日頃からインフルエンザにかからないよう、免疫力を高める身体づくりも大切です。免疫力を高めるためには、以下のことを心がけるとよいでしょう。
- (1)バランスの良い食事
- (2)免疫力を高める健康補助食品の利用
- (3)禁煙と適度な飲酒
- (4)ストレスの少ない生活(睡眠、よい人間関係、笑い)
すべてを実行することは難しいかもしれませんが、(1)(2)の簡単な方法として、ヨーグルトなどの乳酸菌食品の摂取を日常生活に取り入れることがお勧めです。乳酸菌には免疫細胞の6割が集中する小腸の菌叢(きんそう:細菌の集まり)を健全に保ち、免疫機能を高めるといわれています。人体最大の免疫センターといえる小腸を健全に保つことが、効率的に免疫を高める方法だといえます。
しかし、たいていの場合、外から送り込んだ乳酸菌は腸に定着せず、時間がたったら排泄されてしまいます。ですから毎日飲んで乳酸菌を送り続けることや、より腸内に長くとどまる菌を選ぶことが重要です。「おなかへGG!」(タカナシ乳業)等の商品に含まれているLGG乳酸菌は、腸内での持続性にすぐれた乳酸菌で、世界でもっとも研究されている乳酸菌です。実際にタカナシ乳業や明治乳業は、乳酸菌がインフルエンザ予防効果を示す動物実験結果を発表しており、今後も発展が期待される研究分野です。
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死亡率の減少などとともに、次第に「インフルエンザは風邪の一種でたいしたことはない」という認識が広まってしまっていますが、決してそうではありません。正しい知識とともに、近年注目されている乳酸菌の機能も活用していただき、みなさんが健康的な生活を送れることを願っています。






