• おなかから、人の健康を考える
タカナシ乳業
ホーム サイトマップ お問い合わせ
乳酸菌について LGG乳酸菌って LGG乳酸菌の可能性 コラム Q&A
第2回メチニコフ賞受賞!!
LGG乳酸菌研究者セポ・サルミネン教授インタビュー
LGG乳酸菌の永年の研究者であるセポ・サルミネン教授が、このたび微生物・発酵乳分野などで優れた研究者に贈られる 第2回「IDFイリヤ・メチニコフ賞」を受賞されました。そのセポ・サルミネン教授が2010年秋に来日した際に行ったインタビューの様子をご紹介します。
サルミネン教授の研究成果

セポ・サルミネン教授と共同研究者であるエリカ・イソラウリ教授(Prof. Elika Isolauri)が発表された Lactobacillus rhamnosus GG (以下LGG乳酸菌)によるアトピー性皮膚炎の予防効果は、2001年の医学誌ランセットに掲載されるや世界中に報道されました。日本でも乳酸菌がアトピー性皮膚炎の予防効果があるらしいと話題になり、それをきっかけにずいぶんとプロバイオティクスが注目されることになりました。まさにアレルギーとプロバイオティクス乳酸菌の研究におけるパイオニア的存在です。

今回の受賞は、イソラウリ教授との共同受賞であり、お二人がこれまで取り組んできた健康を促進させる新しい手段としてプロバイオティクスや発酵乳に焦点をあてたこと、アレルギーや炎症性疾患などの対策として有効かつ安全なツールになりえることを示し、公衆衛生、栄養学者、乳業関係者に重要な意義を与えたことが受賞理由となりました。
インタビュアー このたびはイリヤ・メチニコフ賞受賞おめでとうございます。受賞にあたり率直なご感想をお聞かせください。
サルミネン教授 ありがとうございます。突然の受賞の知らせだったので、はじめはとても驚きました。イソラウリ先生はもちろんのこと、研究に関わったスタッフ、研究に関連するさまざまな人からお祝いの言葉をいただき、大変ありがたいと思いました。
アレルギー研究のきっかけ
インタビュアー この研究に至ったきっかけ、経緯をお聞かせいただけますか。
サルミネン教授 はじめは乳幼児のロタウィルス感染についての研究を一緒に取り組みました。そこでLGG乳酸菌が腸管のバリア機能を回復させる力があることがわかりました。また、発酵乳に含まれるタンパク性アレルゲンは乳酸菌発酵によって、アレルゲン性が低減されることがすでにわかっていました。そこでまず、私たちは食物アレルギーについてもLGG乳酸菌はなんらかの有益な効果があるのではと仮説を立てました。現在でも続いているLGG乳酸菌によるアトピー性皮膚炎の予防効果の研究はそこからはじまりました。
なぜLGG乳酸菌
インタビュアー お二人の研究にはLGG乳酸菌が多く使われていますが、何か理由があるのでしょうか。
サルミネン教授 それはLGG乳酸菌が特殊な乳酸菌だからです。特に腸管での付着性が強い乳酸菌であるということに着目しました。
現在ではLGG乳酸菌の遺伝子情報がすべて解明されましたが、そこからもLGG乳酸菌が特殊であることがわかります。ひとつはLGG乳酸菌の細胞の表面は小さなせん毛で覆われています。この小さなせん毛がLGG乳酸菌の付着性を強くしていることに関連しているのではないかと思われます。そのことはLGG乳酸菌と宿主との相互作用にも影響していると思われます。
インタビュアー 他の付着性のあるといわれている乳酸菌もLGG乳酸菌と同様のメカニズムなのでしょうか?
サルミネン教授 そうとはいえません。それぞれの菌はそれぞれのメカニズムで付着性を持っていると思われます。
細胞の表面に小さなせん毛をもっているのは、現在確認されている乳酸桿菌(Lactobacillus)の中ではLGG乳酸菌だけです。
インタビュアー もしLGG乳酸菌を使っていなかったとしたらどのような結果になったと思われますか?
サルミネン教授 他の乳酸菌を使っていたら別の結果になったかもしれませんね。乳酸菌の性質はすべて異なります。 したがって結果もすべて異なると思われます。ですから現在では菌種よりも単一菌株がより重要視されています。
プロバイオティクスブーム
インタビュアー ここ10年の間に、日本でもずいぶんとプロバイオティクスが認知されてきたと感じています。このような環境の変化をどのように感じていますか?
サルミネン教授 私も腸内細菌、とりわけプロバイオティクスへの理解・関心が高まっていることを感じます。 その原因は腸内細菌と健康の関わりがより明確になってきたからでしょう。 特にさまざまな疾患に関する臨床的な検証ができるようになったこと、そして疾病予防についての研究が可能になったことが要因だと思います。
発展が期待される分野は?
インタビュアー 日本では、インフエンザウイルス感染症の流行とともに多くの人が免疫力に関心を持つようになりました。特に腸内環境は生体の免疫力に影響を与えていると理解され、発酵乳への関心も高まっています。プロバイオティクス乳酸菌の可能性は、今後どのように発展していくのでしょうか。
サルミネン教授 プロバイオティクス乳酸菌で今後期待できる分野は、「ウイルス感染症」と「体重維持・肥満」の分野だと思います。プロバイオティクス乳酸菌は、おそらくヒト腸管のバリア機能を高め、ウイルスの感染を防ぐこともできるのではないかと考えています。また我々の研究では、プロバイオティクス乳酸菌が腸管内のウイルスに付着し、体外へ排出することを明らかにしています。最近、我々の研究グループは新生児を対象とする研究において、プロバイオティクス乳酸菌を飲用したグループは、対照群に比べてウイルス感染症の発症が有意に低下していることがわかりました。
一方、体重維持・肥満分野においても、今後大きく期待できるのではないかと考えています。
インタビュアー その他の研究にはどのようなものがあるのでしょうか。
サルミネン教授 いろいろありますが、ますます盛んになるであろう研究のひとつが乳幼児の分野です。最近、アメリカで行われたメタ解析(過去の研究結果を総合的に評価する解析)ではプロバイオティクスが乳幼児の下痢などに対して治療および予防効果があることを明らかにしました。私どものツルク大学でもこれまでに12年間、特に乳幼児~小さな子供を対象にしたプロバイオティクスの研究を続け、その安全性をより明確にしました。
今後もつづくアレルギー分野の研究
インタビュアー アレルギーの研究分野においては、プロバイオティクス乳酸菌は今後どうなりますか?
サルミネン教授 もちろん、アレルギーの研究分野も今後の重要な方向性の一つだと思っており、私どもの研究グループも、この分野に力を入れています。 最近、イソラウリ先生は従来の「衛生仮説」から発展した「栄養仮説」を提唱しています。「栄養仮説」では、アレルギー疾患を改善するために、乳幼児を早期に「微生物に曝露する」ことだけではなく、早期に「バランスの良い栄養摂取」をさせることも必要だと考えています。つまり、良い微生物は良い食物と一緒に摂取することで、子供の免疫機能を正常に働かせ、アレルギー疾患の予防に繋がるのではないかと思われます。一方、微生物を考える場合、ぜひご理解していただきたいのは、プロバイオティクス乳酸菌は菌株によって、効能およびその作用機序が異なるという点です。したがってよく研究され、多くの学術エビデンスを持つ菌株をお薦めします。 また、個々の菌株の性質に沿って活用すべきと考えています。
インタビュアー 菌株はどのようになるでしょうか?
サルミネン教授 プロバイオティクス乳酸菌研究は現在全世界的に盛んに行われており、今後新しい機能性を持つ菌株がますます発見されると考えています。例えば、アンモニア分解機能を持つ新しい乳酸菌なども期待できます。一方、将来新しい技術によって既存菌株の改良も可能ではないかと思っています。繰り返しになりますが、プロバイオティクス乳酸菌は菌株によって、その性質は異なります。すべての乳酸菌を同様に取り扱うことができないので、特徴のある乳酸菌はこれからも継続的に使われると考えております。たとえば、アレルギーの研究分野において、LGG乳酸菌を超える菌株がまだ存在しないので、私どもの同分野の研究においては、LGG乳酸菌を継続的に使おうと考えております。
プロバイオティクス食品の今後の可能性
インタビュアー プロバイオティクス乳酸菌を使用する機能性食品の今後について、どう思われますか。
サルミネン教授 乳酸菌の場合、繰り返し強調したように、よく研究された目的に合う菌株を選ぶべきだと思います。選抜された「特殊な乳酸菌」と品質の高い素材を一緒にすることで、よい食品を作ることができると思います。食品の機能性においては、抗炎症効果はこれからもっと重要になると考えています。
近年、感染症、アレルギー、肥満などのさまざまな疾患や健康問題は生体の「炎症」と深く関わりを持つことが明らかにされており、プロバイオティクス乳酸菌関連の機能性食品の効果はこれから大きく期待されると考えております。
インタビュアー 本日は貴重なお話をどうもありがとうございました。
(インタビュー:2010年10月5日)
プロフィール・賞について

Prof.Seppo Salminen (セポ・サルミネン教授)
フィンランド・ツルク大学 食品化学教授・機能性食品センター長
オーストラリア・メルボルン大学 客員教授 理学博士
機能性食品・特にプロバイオティクス乳酸菌の分野において、最も有名な研究者の一人。
EU食品安全委員会委員、フィンランド健康・毒物学専門委員会委員、フィンランド新規食品委員会委員、フィンランド機能性評価委員会委員を務める。

IDF イリヤ・メチニコフ賞 2010 について
IDF(国際酪農連盟)・パスツール研究所・ISAPP(プロバイオティクスとプレバイオティクスに関する国際会議)が設立。微生物学分野、バイオテクノロジー分野、
栄養および健康分野における発酵乳の研究促進への尽力に対して、IDF Elie Metchnikoff Prize 2010(IDFイリヤ・メチニコフ賞2010)が贈られます。
©Takanashi Milk products co.ltd., 2013 All Rights Reserved.