牛乳アレルギーとLGG®乳酸菌

研究1

牛乳アレルギー患者の耐性獲得に対するLGG®乳酸菌の影響:ランダム化比較試験

研究2

牛乳アレルギー患者の耐性獲得に対するLGG®乳酸菌の影響:他の様々な人工ミルクとの比較

研究3

IgEを介した牛乳アレルギー患者の耐性獲得に対するLGG®乳酸菌の影響:研究2の追跡試験

〈 研究1 〉

牛乳アレルギー患者の耐性獲得に対するLGG®乳酸菌の影響:ランダム化比較試験

背景・目的

牛乳アレルギー(CMA)患者の耐性獲得に対するプロバイオティクスの効果の可能性は、ほとんど未解明の研究分野です。CMA耐性獲得に対するプロバイオティクス株(LGG®乳酸菌を含まない)の効果に関する唯一の先行研究では、否定的な結果が得られています。本試験ではLGG®乳酸菌をEHCFに補充することがCMPに対する耐性獲得に影響するかどうかを検討しました。

方法

二重盲検プラセボ対照食物負荷試験(DBPCFC)にてCMAと診断された患者、生後1~12ヵ月の乳児55名を対象に、EHCF群(n=28)またはLGG®乳酸菌+EHCF群(n=27)を投与しました。6ヵ月後および12ヵ月後に、臨床的評価、皮膚プリックテスト(SPT)、アトピーパッチテスト(APT)、および食物負荷試験を行いました。

結果
  • 6ヵ月間の除去食の後、55名の患者に対して食物負荷試験を実施しました。その結果、EHCF群28名中22名、LGG®乳酸菌+EHCF群27名中11名がCMA陽性となりました。このとき、臨床的耐性の完全獲得率は、EHCF群よりLGG®乳酸菌+EHCF群で高くなりました【図1】。CMA陽性者を12ヵ月後に食物負荷試験を実施したところ、EHCF群では22名中13名、LGG®乳酸菌+EHCF群では11名中5名がCMA陽性でした【図1】。

  • 【図1】牛乳アレルギー耐性獲得率
結論

LGG®乳酸菌補充のEHCFを摂取することで、乳児のCMPに対する耐性獲得が促進されることが示されました。すべての患者は、食物負荷試験の結果が陰性であった後6ヵ月間、CMAに関連する兆候や症状を示すことなく、毎日定期的に牛乳を消費することができ、これは耐性の持続といえます。

【出典】Canani et al. J Allergy Clin Immunol. 129:580-582 (2012)
〈 研究2 〉

牛乳アレルギー患者の耐性獲得に対するLGG®乳酸菌の影響:他の様々な人工ミルクとの比較

目的

この研究は、牛乳アレルギー(CMA)を持つ乳児の耐性獲得率に及ぼす食事管理戦略の違いを前向きに評価することです。

方法

CMAと診断された生後 1~12 ヵ月の乳児260名を対象に、次の5つのグループに分け、12ヵ月後にアレルゲンの負荷試験を実施し、耐性の獲得を前向きに評価しました。

  1. 広範囲加水分解カゼインミルク:EHCF(n = 55)
  2. LGG®乳酸菌を補充したEHCF:LGG®乳酸菌+ EHCF(n = 71)
  3. 加水分解米ミルク:RHF (n = 46)
  4. 大豆ミルク:SF (n = 55)
  5. アミノ酸ベースミルク:AAF(n = 33)
結果
  • 260名の小児(男児167名、女児93名 ; 年齢5.92ヵ月)を評価したところ、EHCF群及びLGG®乳酸菌+EHCF群では、ほかの3群(RHF群、SF群、AAF群)と比較して、12ヵ月後に牛乳に対する耐性を獲得した小児の割合が有意に高くなりました(P <0.05)【図1】。

  • 【図1】牛乳に対する耐性を獲得した小児の割合
  • 二元回帰分析により試験終了時の耐性獲得率は、次の2つの要因によって影響を受けることが明らかになりました。

    1. IgEを介したメカニズム
    2. EHCF群またはLGG®乳酸菌+EHCF群の選択

結論

EHCFは、他の食事療法の選択と比較した場合、CMAの小児における耐性獲得を促進しました。そしてこの効果は、LGG®乳酸菌によって増強されました。

【出典】Canani et al. J Pediatr 163:771-777 (2013)
〈 研究3 〉

IgEを介した牛乳アレルギー患者の耐性獲得に対するLGG®乳酸菌の影響:研究2の追跡試験

背景

食物アレルギー(FA)は、小児期によくみられる慢性疾患です。最近の研究では、過去20年間にFAの自然史が変化し、有病率、臨床症状の重症度、晩期への持続リスクが増加していることが示唆されています。小児におけるFAの有病率の増加は、医療制度に多大な費用をもたらし、家族にとってはさらに大きな負担となるなど、重要な経済的影響を及ぼします。
さらに、FAを持つ小児は、後年、他のアレルギー疾患(AM)に罹患するリスクが高くなります。米国疾病対策予防センターの最近の研究によると、FAを持つ小児は、喘息(4.0倍)、アトピー性湿疹(2.4倍)、呼吸器アレルギー(3.6倍)など、他のアレルギー疾患を持つ傾向があることが分かっています。

目的

この研究の目的は、LGG®乳酸菌を補充した広範囲加水分解カゼインミルク(EHCF)の投与が牛乳アレルギー児において他のアレルギー症状発生を減らすことができるかどうかを確認することです。試験するために平行群(パラレルアーム)ランダム化比較試験を行いました。

方法
  • IgEを介したCMAの小児220名(名男児147名、女児73名 ; 年齢5.0ヵ月)をEHCF群(n=110)またはLGG®乳酸菌+EHCF群(n=110)に分け、36ヵ月間追跡しました。主要評価項目は、少なくとも一つのアレルギー症状(湿疹、じんましん、喘息、および鼻結膜炎)の発症でした。副次評価項目は耐性獲得であり、これは12、24、および36ヵ月における二重盲検食物負荷試験結果(DBPCFC)での陰性と定義づけました。アレルギー症状は標準化された基準に従って診断されました。耐性獲得は12ヵ月ごとに評価されました。

  • 【図1】牛乳タンパク質の耐性獲得における絶対リスク
結果

Complete case analysisにおいて、EHCF投与群とLGG®乳酸菌+EHCF群の36ヵ月間に少なくとも1回のアレルギー症状がおこる絶対リスク差は-0.23でした。また、牛乳タンパクの耐性獲得に関する絶対リスク差は12ヵ月で 0.20、24ヵ月で0.24、および36ヵ月で0.27でした。不参加の27名全員にアレルギー症状が発生したと仮定しても、主要評価項目(アレルギー症状の発症)への実質的な影響はありませんでした。

結論

LGG®乳酸菌を補充したEHCF摂取は他のアレルギー症状の発生率を低下させ、IgEによるCMA児における経口免疫寛容を促進します。

【出典】Canani et al. J Allergy Clin Immunol. 139:1906-1913 (2017)
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