特に腸には食べたものが長い間とどまることもあり微生物が増えやすい環境にあるので、善玉菌も悪玉菌も含め、体の中でもっとも多くの常在菌が住み着いている場所なのです。
個人差はありますが、数百種類・約1000兆個、重さにして約1kgの腸内細菌が腸管内にいます。この腸管内での多種多様な細菌の集団は、草木が生い茂る叢(くさむら)での植物集落にたとえて腸内細菌叢(腸内フローラ)と呼ばれています。大まかには、体にいい働きをするビフィズス菌や乳酸菌などの「善玉菌」、健康を阻害する作用のあるウェルシュ菌などの「悪玉菌」、バクテロイデス菌などの「日和見菌」の3種類に分けられ、一定のバランスを保っています。健康な人の腸内では善玉菌が優勢で悪玉菌の増殖を抑えています。このバランスは食生活、老化、ストレスなどで変化し健康に影響を与えることから、この腸内細菌叢のバランスを一定に保つことが重要です。
全ての乳酸菌が生きて腸まで届くわけではありません。胃から分泌される胃酸は強い酸ですので多くの細菌を死滅させる働きがあります。また、腸で分泌される胆汁酸にも殺菌作用があります。胃酸、胆汁酸に耐性のある乳酸菌だけが生きて腸まで届きます。
腸は食事によって取り込まれた栄養分を消化・吸収する働きがあります。腸管の食事が通る側(管腔側)は体の表面と同じく“外側”であることから、食事や呼吸とともに取り込まれる多種多様な外来の異物、微生物の接触に常にさらされています。よって体に害があるものの進入に対しては早急に応対しなければなりません。このため、腸管には体の全免疫細胞の約60%にも相当する免疫細胞が腸に集まっているといわれていることから、腸と免疫には密接な関係があるのです。
食品として摂取した乳酸菌は、その他の食品と同様に胃を経て腸に到達します(生きて腸に届く乳酸菌と死んでしまう乳酸菌がいます)。腸管には免疫細胞が集中しており、中でも小腸のパイエル板とよばれる免疫組織は腸管での免疫を誘導・制御するために必要な細胞が存在しており、重要な役割を果たしています。小腸に到達した乳酸菌がパイエル板内の免疫細胞に接触すると、免疫細胞がその刺激に対して応答することが知られています。
こうした乳酸菌による免疫細胞への刺激によって発生する信号・情報が、全身に伝わって花粉症やアトピー、インフルエンザに関わる免疫系に良い影響をあたえるのではないかと考えられています。